漢字のテストは無くなったよ |
![]() ![]() 学校へ行く朝の歩みは、ゆううつだ。毎朝漢字のテストがあるんだが、僕はいつも間違ってばかり。昨日はクラス全員の前に立たされて、お前がテストで書いた漢字を書いてみろと黒板にそれを書かされて、ネチネチと間違いを指摘された。なんで、あんな風に子供に恥をかかせようとするんだろう。 今日もまた、怒られて恥をかかされるんだろうなあ、と思いながら教室に入った。始業の鐘がなって、先生が教室に入って来た。大きな段ボールの箱を持って来て、教壇の上に置いた。中から分厚い紙の束を引っ張り出した。えええっ、今日のテストはこんなにたくさんあるの!とびっくりしたら、先生は「イマからキョウカショをクバります」と言う。テストじゃなかったと安心した。 「あたらしいキョウカショは、マにあわないので、キョウのコクゴのジュギョウはこれをツカいます。」と先生は言った。ちょっと喋り方が変な気がしたが、気のせいだろうか、とその時は思った。 ホッチキスで止められたプリントを見て、おどろいた。漢字がなくて、漢字を書くところはカタカナになっている。でも、これなら読めなくて注意されることも無くなるな、と、ちょっとウレシイ気もした。 先生が言った。 「キョウから、みなさんは、カンジをツカわなくなります。カンジはヨソのクニのモジなので、ツカっては、いけないコトに、なりました。ホウリツで、そう、きまったのです」 ジュギョウがはじまったら、キョウシツに、アタマがとんがったおじさんがはいってきた。そのおじさんは、キョウシツのイチバンうしろにすわって、コクバンにモジをかくセンセイをみていた。 なにしろ、キョウからかわったばかりなので、センセイも、とまどっている。チョークで「今日のお話」と書いて、あわててそれを消した。そうすると、うしろから、あのおじさんが、おおきなコエで、 「ふた~~つ。まちがいが、ふた~~つ」といった。 センセイは、そのコエをきいて、「もうしわけ、ありません」とコエをふるわせながら、いった。そして、コクバンに「きょうの、おはなし」と、かきなおした。 そのあとも、センセイはナンドか、かきまちがいをした。そのたびに、とんがりアタマのおじさんが、スウジをカウントして、ノートにメモしていた。ジュギョウのおわりのカネがなったら、センセイは、ぐったりして、ツクエにテをついて、「これで、1ジカンめは、おわります」といって、でていった。 すると、とんがりアタマおじさんが、コクバンのところまで、アルいてきて、ぼくたちのほうを、むいて、ジブンをショウカイして、いった。 「さあ、みなさん、わかりましたか。キョウからカンジは、ツカってはいけなのですよ」そして、さらに、こういった。 「ジュギョウで、カンジをつかう、ワルいセンセイがいたら、おじさんたち、きょういく・かんしイインカイにしらせるんですよ」 きょういく・かんしイインカイ、のエラいヒトがこういったあとに、ヒデイチがテをあげて、シツモンした。 「ひらがな、や、カタカナ、は、カンジからできたものと、チチからきいております。だとすれば、ひらがな、も、カタカナ、も、いずれ、ハイシされるの、でしょうか?」 カンジをツカわなくても、ヒデイチはむずかしいコトを、いうなあ、と、ボクはカンシンしたのだが、とんがりアタマのおじさんは、それをキいたあと、クチを「へ」のジにむすんで、ヒデイチをにらみつけ、なにもこたえずに、イリグチのドアを、おおきなオトをたててしめて、でていった。しばらくして、コウチョウ・センセイが、いつもは、ローカをハシってはいけませんと、いってるくせに、じぶんはハシりながらやってきて、ヒデイチをつかまえ、ひっぱるように、どこかへ、つれていった。そのあと、ヒデイチはカエってこなかった。 キュウショクのパンは、キョウは、なかった。パンのかわりに、「わがし」が、でた。あまくてラッキーと、よろこんだけど、あとになって、ムシバのイタみがひどくなった。 ![]() 目次へ |