若いころは、甘美でロマンティックな曲が多かったのですが、2度目のフラン ス留学の後は、近代和声を駆使する感覚的な作風へと変身しています。作風は 変わっても、根幹にはメキシコの民族性が流れています。
近代の音楽語法を用いて、民族性を洗練された形で作品化しています。オーケ ストレーションは、うまいと思います。
セゴビアの依頼によってギター曲を残しています。中でも楽しいのが、セゴビ アに頼まれポンセが書いた「バロック音楽」で、ヴァイス作曲ということで発 表された「イ短調組曲」などいくつかのニセバロック曲を書いています。「イ 短調組曲」が話題になったことで、ヴァイスの研究が進み、イタズラがバレて しまいました。
また、このニセバロック曲群は、「バロック音楽」として公開したために、耳 コピー譜が著作権の心配なしに発売されてしまいました。そのため、ここでも ポンセは印税を受け取ることができなかったのです。
ギター曲には、「ソナタ第三番」「前奏曲集」「スペイン のフォリアによる変奏曲とフーガ」、そして(あくまでも私見ですが) 傑作「ギターとハープシコードのためのソナタ」 など、名作が揃っています。ポンセは、不協和音、特に短二度の使い方が上手 いと思います。キラキラッと輝く短二度の響きが美しく、これがギターに合っ ています。
ピアノ曲、オーケストラ曲も多く書いておりますが、あんまり演奏されること はありません。ピアノ曲では、フーガを得意としてたらしく、大胆にもバッハ のテーマによるフーガがあります。
ポンセのピアノ曲集。ソリストは、Jorge Federico Osorio(ホルヘ・フェデリ コ・オソリオって読むのかな?)。ギター弾きに嬉しいのは、「スケルツィー ノメヒカーノ」のオリジナルが聴けることです。タイトルの Ballada Mexicana は、メキシコ風なセンチメンタリズムが心地よい曲です。
収録曲は、
Ballada Mexicana[*1], | Arrulla Dora, | Romanza de Amor |
Preludio y Fuga Sobre un Tema De Handel | ||
Mazuruka No. 1,2,4,5,6,7,10 | ||
Scherzino Mexicano, | Gavota[*2], | Intermezzo No.1 |
Rapsodia Cubana No.1 |
ポンセ、チャベス、レヴエルタスなど、メキシコ作曲家のオーケストラ作品の オムニバス曲集(全6集)です。指揮は、エンリケ・バティス、オーケストラは ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、メキシコ国立管弦楽団など
その第1,2,3,5,6集にポンセの曲が入っています。注目は、第2集のヴァイオリ ンコンチェルト。第2楽章では、甘美の極みのような「エストレリータ」をテー マに使い、近代和声でクールに料理しています。
第1集 | 日本クラウン CRCB-71(国内版) CD DCA738(輸入版) |
市の立つ日, メキシコ点描, 夜の版画 | |
第2集 | ASV CD DCA866(輸入版) |
ヴァイオリン協奏曲(Vnソロ:H.シェリング) | |
第3集 | ASV CD DCA871(輸入版) |
南の協奏曲(ギター協奏曲 G.ソロ:A.モレノ) | |
第5集 | ASV CD DCA894(輸入版) |
エストレリータ(オーケストラ版、編曲者不明) | |
第6集 | ASV CD DCA926(輸入版) |
ピアノ協奏曲(ソロ: Jorge Federico Osorio) Gavota([*2]のオーケストラ版) Poema Elegiaco Ballada Mexicana([*1]のピアノ&オーケストラ版) |
私は、20世紀を代表する作曲家の一人だと思ってるので、残念でなりません。
ヴィラ=ロボスの音楽は、骨太なメロディと強烈なリズムの音楽。ブラジル音 楽で、オーケストラ(西欧音楽)をねじ伏せようとしてるような力強さがありま す。西欧音楽の語法の中にメキシコ音楽のエッセンスを注いだポンセとは対照 的です。
この力強さは、どうしてもギャングのボスとしか見えない彼の顔を見れば納得 できるでしょう。トレードマークの太い葉巻をくわえてる姿は、モーツァルト やショパンなどの伝記で植えつけられる「病弱な天才作曲家」からまるでかけ 離れています。どんな顔か知りたい方は、 ヴィラ=ロボス博物館 とか、Heitor Villa-Lobos' Home Pageあたりを覗いてみてください。
ギターの作品では、「ブラジル民謡組曲」「ショーロス第 一番」「5つの前奏曲」「12の練習曲」「協奏曲」などがあります。 「練習曲」は傑作。ラベルの得意技でもある、和声の平行移動を多用したおも しろい音響を作りだしています。この平行移動は、ピアノよりギターの方が楽 にでき、また、本当に平行移動を実感できます:-)
ヴィラ=ロボスの作品で、有名なのは、9曲の「ブラジル風 バッハ」、十数曲(いかん、曲数を忘れている)の 「ショーロス」です。西欧的感覚なら、シリーズ化する場合、楽器編 成を同一にするのがあたりまえ(弦楽四重奏曲とか、ピアノソナタなど..)です が、このヴィラ=ロボスのシリーズは、ギターソロ、チェロ八重奏、オーケス トラと編成がマチマチです。コンセプトでシリーズ化したと言えるかもしれま せん。これらの「全曲演奏会」って大変そうですね。
CDについては、ポンセに比べればたくさん出ています。ここでは、ヴィラ=ロ ボス自作自演のCDを紹介します。自作自演 CDもいろいろ出ていますが、ここ では6枚組のEMIのものを
これには、「ブラジル風バッハ」全曲、「ショーロス」No 2,5,10,11、ピアノ 協奏曲No.5、などが収録されています。
中でも印象的なのは、ブラジル風バッハ第五番(ソプラノと8台のチェロ)で す。ヴィクトリア・デ・ロスアンヘレスの延びのある素晴しい歌声が心に響く 名演です。
昔、10代のころ、わけわからんままに現代音楽をあれこれ聴いていた時期があ りましたが、武満さんの「グリーン」をたまたま聴いたとき、はじめて、現代 の音楽にやさしさ、暖かさを感じました。
武満さんのCDは、たくさん出ているので、ここで紹介する必要はないと思 いますが、お気にいりの一枚を。
うーむ、説明できない。とにかく名曲。演奏は、東京楽所。