急 性 腎 不 全
急性腎不全とはどういう状態か
急性腎不全を分類すれば
急性腎不全はどんな場合に発生するか
1)虚血性急性腎不全
まず虚血性のものであるが、これはショックなどで腎臓への血流が低下した場合、もしくは腎動脈の閉塞などで腎循環が途絶えた場合に発生してきます。このような状態を輸液、輸血、昇圧剤で短期間のうちに改善してしまえば前に述べた腎前性の急性腎不全として尿毒症に陥ることなく回復しますが、この状態が長時間持続すると腎実質の障害をおこして、いわゆる腎性の急性腎不全となってしまいます。それではどのくらいの時間、腎臓の血流が阻害されると急性腎不全になるのでしょうか?これには色々な条件が関与するので一概にはいえませんが、完全な血流遮断で1時間以上、血圧が80mmHg以下で2時間以上も放置されると急性腎不全が発生する頻度が高くなります。
このような状態がおきる理由として、ショック時などには体内の血流分布に異常が起こり、脳などへの血流は比較的良好に保たれるが、腎臓への血流は犠牲にされ、極端に減少してしまう事も関係しています。(表1)
いずれにしても、このような虚血状態がおきていると腎臓の中でもっともやられやすい尿細管が障害されたしまいます。急性腎不全の事を急性尿細管壊死と呼んでいるのは尿細管の病変が組織学的にもっとも目立つ所見だったからです。なおこの虚血性の変化はネフロンに散在性に出現しますが、尿細管基底膜の障害はおこさないといわれてます。
2)腎毒性急性腎不全
3)その他の原因による急性腎不全
以上述べた虚血性と腎毒性の急性腎不全は腎性急性腎不全の代表的なものですが、そのほかこれらとは多少異なったものも知られています。それは免疫反応が関係した急性糸球体腎炎や血管内凝固症候群などに由来する急性腎不全です。
血液は固まろうとする動き、すなわち凝固作用と、一旦凝固した血液を溶かそうとする働き、すなわち線維素溶解、略して線溶という現象が巧みにバランスをとって出血や血管の閉塞を防いでいます。このように血液は非常にダイナミックなものですが、何かのきっかけでこのバランスが崩れると血管内で凝固がおこり毛細管が閉塞してしまいます。血管内凝固症候群はこのような状態をいい、このように血管内で血液が凝固すると、体内にある血液凝固に必要な因子が使用されて欠乏してくるたね、非常に出血しやすい状態が生じます。これを消耗性凝固異常と呼んでます。この血管内凝固症候群の引金をひくのは敗血症、エンドトキシン血症などが多いですが、その他m悪性腫瘍や妊婦にも起こりやすい事が知られています。
このように血管内で血液凝固がおきると、血栓が糸球体にひっかかってこれを閉塞してしまい急性腎不全となります。重傷の場合はいわゆる皮質壊死となり、急性腎不全でありながら腎機能が回復せず、そのまま慢性の腎不全となってしまいます。
尿素やクレアチニンがそれほど上昇してないうちから出血傾向の強い急性腎不全は血管内凝固症候群が原因となっている可能性が高いので、血小板や血液中のフィブリン分解産物、血沈などを調べて必要に応じてヘパリンを使用しなければならない。